こころの展覧会

「でも、皐月さん。一番つらかった時、椿姫さんの支えになったのは、間違いなく皐月さんじゃないですか?皐月さんの優しさがあったからこそ、立ち上がれたんだと思いますよ」

藍は笑顔で言った。

「そうね……。姫が変われたのは、藍くんのおかげなのよね。姫が言ってたわ。藍くんといるとね、“強くありたい”と思わせてくれるってね。なんか悔しいわ」

言って、皐月は苦笑した。

「そういえば藍くん、君の手紙にはなんて書いてあったの?」

「僕の手紙には、字はありませんでした。代わりに、白詰め草が入ってたんです」

椿姫が藍に残した封筒の中身は、手紙ではなかった。一輪の白詰め草が入ってるだけだった。その意味を、藍は今も考え続けていた。しかし、一向に答えが見つからなかった。
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