こころの展覧会
重い空気が身体にのしかかってくる。
「……すいません」
藍は俯いたまま、顔を上げることができなかった。
そんなことまで考えていなかった。
全然考えもしなかった。
でも、あの家に自分がいないことに気づいてくれる人がいるだろうか。
答えはわかっている。
気づいてくれる人なんていないんだ。
あの家には居場所がない。
だったら、どこに居場所はあるのだろう。
どこにもない。
僕の“いてもいい場所”が。
ざわめきたちが、暴れ出す。
ひどい頭痛と耳鳴りに、藍は目を閉じ、唇を噛んだ。
瞼の裏に映るのは…―、
父親や絵の講師の呆れた目。
母親の拒絶する目。
兄の無機物でも見るかのような目。
クラスメイトの見下す目と、あわれみのような目。
見たくない。
聞きたくない。
僕はもう、絵を描けないんだ。
筆を握れないんだ。
「…帰る場所が…ないんです……」