こころの展覧会

藍は振り絞って声にしてみたが、擦り切れたような声になってしまった。


「だったら、此処にいればいい」


廊下から声がした。
冷厳たる響き。
障子戸が開き、扇を持って現れたのは、墨染めの着物を着た女性。
仮面をしたその女性は、藍の前で歩みを止めた。

「姫っ……!」
「皐月は黙って」

凛とした厳しい声音が、部屋中に響いた。
一瞬すべてが沈黙する。
すべての音が意識から消える。

仮面の女性はその場に座り、藍と目線を合わせた。

「今此処で決めなさい。どこにも行く場所がないなら、此処に居ればいい。そのかわり、此処にいる間は働いてもらう。でも、此処にも居たくないなら、今すぐに出て行きな」

その声質は氷のように冷たく、固い。
女性は声質と同じ冷ややかさを纏っている。
 

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