こころの展覧会
「藍、お茶を淹れて」

椿姫はそう言うと、掛け軸のかかっている壁のすぐそばに移動して座った。視線の先には、黒い器に張った水に浮かんでいる白い紫陽花。

藍は隅にあるポットから、熱い湯を急須に注いだ。少し蒸らしてから、湯のみにお茶を淹れた。そして、椿姫のところまで持っていった。

「どうぞ」

藍は椿姫の傍にお茶を置いた。椿姫の視線は、まだ一房の紫陽花にそそがれたままだ。

椿姫の華奢な指が、パラッと扇を広げる。上品な香りが微かに鼻腔をくすぐった。広げられた扇の絵柄は、散りゆく薄紅の花弁。

「椿姫さん…、どうして僕を連れてきてくれたんですか?」

「…似ていると思ったからだ」

「なにとですか?」

「紫陽花だ」

「その紫陽花にですか?」

 
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