こころの展覧会

五月蝿い。
耳を塞いでも、聞こえてくる音たち。
電車のガタンッ、ゴトンッと鳴る音、学生達の話し声、新聞紙や雑誌をめくる音、MDウォークマンから漏れてくる音。
どんな微かな音さえ、頭の奥にまで響いてこだまする。
居心地が悪い。
静かな所に行きたい。
どこでもいいから、このざわめきから解放される場所へ。

……どこでもいい。

藍(ラン)は腰を上げ、ドアの前に立った。
アナウンスとともに開いたドア。
俯いたまま、電車を降りた。
息が詰まるような苦しさは、消えない。
ざわめきも消えない。

知らない名前の駅。
来たこともない場所。
どこへ行こうと、消えることはないのだろいか。

改札を抜け、藍は知らない道を歩いた。建物は少しずつ減っていき、しばらく歩くと、大きな橋が見えてきた。

響く、響く。
こんなにもひどく、雨が降っているというのに。

 

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