こころの展覧会
☆
椿姫に傘を2本と荷物を持たされて、藍が連れてこられたのは、さほど遠くない場所にあるお寺だった。
たくさんの木々や花々に囲まれたお寺は小さく、静かに佇むように建っていた。今の季節は紫陽花が目立つ。石段の脇には紫や青の紫陽花で溢れ返っていた。
椿姫は荷物の中からスケッチブックと鉛筆のセットを2セット取り出した。そして、1つを藍の前に差し出した。
「今から絵を描け。私の邪魔にならないようにな」
そう言って、椿姫は紫陽花園の方へと行ってしまった。有無を言わさず押しつけられるようにして渡されたスケッチブックを、藍はどうすべきか考えた。
まさか絵を描かされるとは思ってもなかった藍はただ困惑の表情で、真っ白なスケッチブックに視線を落としたまま。
絵を描きたくなかった。
正確には、描けないが正しい。
藍は絵を描こうとすると、手が震えるのだった。
椿姫に傘を2本と荷物を持たされて、藍が連れてこられたのは、さほど遠くない場所にあるお寺だった。
たくさんの木々や花々に囲まれたお寺は小さく、静かに佇むように建っていた。今の季節は紫陽花が目立つ。石段の脇には紫や青の紫陽花で溢れ返っていた。
椿姫は荷物の中からスケッチブックと鉛筆のセットを2セット取り出した。そして、1つを藍の前に差し出した。
「今から絵を描け。私の邪魔にならないようにな」
そう言って、椿姫は紫陽花園の方へと行ってしまった。有無を言わさず押しつけられるようにして渡されたスケッチブックを、藍はどうすべきか考えた。
まさか絵を描かされるとは思ってもなかった藍はただ困惑の表情で、真っ白なスケッチブックに視線を落としたまま。
絵を描きたくなかった。
正確には、描けないが正しい。
藍は絵を描こうとすると、手が震えるのだった。