こころの展覧会
どうしていいかもわからず、何を描けばいいのかもわからず、ただお寺の周辺を歩き回った。時間だけがただ過ぎていく。
ふと視界の隅に椿姫を見つけた藍は、座れそうな大きめの石の上に腰を下ろした。椿姫はスケッチブックに鉛筆を走らせていた。その手の動かし方は、まるで切り刻むように、書きなぐるかのよう。熱心な様子から藍は目を離せなくなった。それを眺める藍の胸中で、不可思議な感覚が渦を巻く。
その感覚がなんなのか、わかりそうでわからない。その感情をわからないままにして、すぐ近くの小さな池に浮かぶ睡蓮の花をスケッチブックに描いた。
どのくらいの時間が経ったのだろうか。腕時計の時計はすでに12時を過ぎていた。震える手を抑えて描いた絵をしばらく見つめ、藍はスケッチブックを閉じた。
「描けたのか?」
言って、椿姫は藍の隣に腰を下ろした。