こころの展覧会


しかし、藍の反応は実に冷ややかなものだった。

「すいません」

藍はいつも父に謝るのと同じように、その言葉を発した。
そんな藍の反応を見て、椿姫は何回も何回も絵を引き裂いた。その欠片は辺りに散らばり、いくつかが風に飛ばされていく。

「なぜ謝る?」

射抜くような視線が、藍を襲う。

「……わかりません」

藍は俯いたまま。
その視線から威圧的なものを感じて、顔を上げられなかった。

藍は本当にわからなくなっていたのだ。

―――「つまらない絵」だと父に言われ始めたのは、いつからだったか。

そんな絵しか描けなくなってしまった。
何を描こうとしていたのだろう。
何を描けばいいのだろう。
わからない。
描いても、描いても、わからない。

今まで藍は、父や先生の言われるがままに絵を描いていた。
強要されることはつらく、それができるまでは難しく、苦しかった。

 

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