こころの展覧会
掴んだ袖には力が込められていく。

しばらく沈黙が続いた。
藍はその沈黙が重苦しくて、手が震えそうになるのを、手に力を入れることで抑えていた。

「……藍」

椿姫は袖を掴む手を無理に解かせて、声のトーンを低く落とす。

「藍」

「……何ですか……」

「藍。お前は一体どうしたいんだ?助けてほしいのか。それとも放っておいてほしいのか。どっちだ。……答えろ」

藍はその質問に答えることができず、きつく目を閉じてしまった。


「……戻るか」

俯いたままの藍を見て、椿姫はぽんっと軽く藍の頭を叩いた。藍は小さく頷いた。



その日から数日間。
椿姫は仕事部屋にこもった。その為、藍とはほとんど会話をすることはなかった。
藍はただ与えられた仕事をこなし、少しずつこの家に馴染んでいった。


< 37 / 203 >

この作品をシェア

pagetop