こころの展覧会

7月の中旬。
藍がこの家に来てから1ヶ月が経った。
皐月の手配により、家の者からしばらくここに住むことを許可された。学校はその間休んでしまっているが、藍にはここでやるべき仕事ができた。

毎朝、庭の花々に水を与えることから1日が始まる。最近の藍の楽しみは、朝霧を受けて静かに開く赤紫の朝顔の花。庭の片隅にあるそれは、まだ咲いているのはほんの2つか、3つほど。涼味がある早朝、何輪咲いているのか数え、台所のカレンダーに数を書き込む。

藍は朝顔の花を見ていると、自然と心が和むのだった。思い出す記憶は、小学1年生の時に学校で栽培したことと、夏休みの宿題の一つである観察日記。

初めて種を植え、自分で育てた植物。芽が出た時や、花が咲いたときの感動が、蘇ってくるのだった。

花に水を与え終わった後は、コーヒーを淹れて椿姫の部屋に持っていく。藍は、まだ、ひどい寝起きの状態の椿姫の姿を見ずに済んでいた。

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