こころの展覧会
もしかしたら、その情報は嘘だったのかもしれないと思ったりもした。

でも、藍は気づいていた。ただ椿姫があまり寝ていないだけということに。そして、かなり小食だということも。

椿姫の部屋の障子戸を開けると、椿姫は藍の予想どおりやはり起きていて、窓の縁にもたれ、外を見ていた。そして、何の言葉も交わさないまま、藍は部屋を後にした。

青い紫陽花を描いてからの椿姫は、部屋にこもることが多くなった。食事をとることが少なくなった。雨の降る日は特に。誰とも話さず、食事をとらず、眠らず。藍は椿姫の身体が心配になっていた。



   ☆



今日の夕食も、椿姫は一口も食べなかった。そして昨日からコーヒー2杯しか口にしていない。
心配そうな表情の藍に、皐月は無理に笑顔をつくったような表情で「毎年のことだから」とだけ言った。
 

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