こころの展覧会

夕食の片づけを終わらした藍は、そのまま台所で一息ついていた。お茶を一口、二口飲んでいると、玄関の戸が開く音が聞こえてきた。

そして、足音は台所へ。
足音の主と、藍の視線とぶつかる。
足音の主の女性は、藍と同じぐらいの身長。小柄で、色素が薄く自然なゆるやかなパーマのかかった髪、可愛らしいという表現が似合う顔。

女は驚いた表情をすぐに笑顔へと変えた。

「はじめまして。あなたが藍くんね」

とても柔和な笑顔。

「はじめまして。麻生藍です。すみませんが、あなたは？」

「鷺ノ宮柊(ｻｷﾞﾉﾐﾔ ﾋｲﾗｷﾞ)よ。ここの住人の一人なの。あなたのことは、皐月から聞いているわ。少し話さない？」

そう言って、柊と名乗った女性は藍の手を握り、居間へと連れ出した。

居間へと移動した二人は、机を挟んで向かい合わせに座った。藍はお茶を淹れ、柊の前に出した。

「ありがとう。気が利くいい子なのね」

あまりにも柔らかく、温かく笑うから、それが藍の表情にも伝染した。