こころの展覧会

だから、自分に興味のようなモノが、そんな感情が、椿姫の中に生まれたんじゃないかと。



   ☆



朝。
雨が止んだのに、椿姫は何も口にしなかった。

昼。
相変わらずな空だったが、雨は降っていない。

そして夕方。
藍は夕食を持って、椿姫の部屋に入った。
椿姫は相変わらず何を考えているのかわからず、ただ窓の外を見ていた。
開けはなった窓から、冷たく湿った風が舞い込んでくる。

「イヤな空模様だ」

消え入りそうな呟きを、藍は聞き逃さなかった。
夕暮れも近い空は厚い雲で覆われて、薄闇の訪れが晴れた日よりも幾分早い。曇天は、あまり心地いいものではない。黒でも白でもないその思い色彩は、気持ちまでも暗くする。

「今日も何も食べないつもりなんですか?」

その問いに、椿姫はゆっくりと藍の方へと視線を移した。

「今は食べる気分じゃないんだ」

久しぶりに発せられた声は、少しかすれていた。

< 47 / 203 >

この作品をシェア

pagetop