こころの展覧会
「いつになったら気分が変わるのですか?」

言って、藍は椿姫の目をまっすぐに見据えた。

「梅雨が終わるまでだ」

「いつ終わるかわからなくてもですか?」

「そんなもの関係ない。藍、お前は何の為に食事をとるのだ?」

「……お腹がすくからです」

「そうだな。身体が必要としているんだろう。では、何の為に必要としている?」

逆に質問を返され始めた藍は、困惑の表情を浮かべた。
答えに詰まったのだ。
それは考えたことのない事だった。
ただ当たり前のように食事をとっていた。

「見えないところで動物は殺され、料理される。植物だって同じだ。命を奪われている。それらを犠牲にしてまで必要としているのは何故だ」

放たれた声が、言葉が、藍の身体にのしかかる。
人間は食べる。
食べたいから食べる。
ほかの生き物の命を犠牲にして。
それは、人間だけではなく、他の生き物だってそうである。

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