こころの展覧会

本当に“僕”という存在が在るのかどうかさえ、わからなくなってしまう。

毎日、毎日、同じ生活。同じ台詞。
五月蝿い。五月蝿い。五月蝿い。

耳障りなざわめきが頭の中を駆け巡って、消えない日はない。


すべてがくだらないことに思えた。

なにもかもくだらない。

世界も僕も。

生きることも。


藍は橋の欄干に近付いていった。川は数日降り続いている雨のせいで増水していて、激しい流れになっている。


何も考えたくない。

消えないのなら、消してしまいたい。

すべてを終わらせてしまいたい。


藍は欄干に手をかけ、半身を乗り出した。下では、川がゴォーッと鳴っている。すべてを呑み込み、勢いを増していく川。
藍の身体が川へ落ちようとした瞬間、



「……死ぬのか?」



一瞬だけ、ざわめきが消えた。

すぐ近くで声がした。
 

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