こころの展覧会

夜顔の花は咲いていた。夜闇に浮かぶその白は、“妖艶”という言葉が似合うほどに、女性の肌を思わせるような艶めかしい白さ。その花は、仄かに甘い香りを放っていた。

その白さからなのか、甘い香りのせいなのか、藍は先程見た椿姫の姿を何度も思い描いてしまった。



   ☆



ある昼のコーヒータイム。
藍と椿姫は、縁側でコーヒーを飲んでいた。
昼のコーヒーには、リラックス効果がある。その効果のせいか、心地よすぎる空間のせいか、藍は今までたずねられずにいた事を言ってしまった。

「椿姫さんは何故お面をしているんですか?」

その質問に、コーヒーを飲んでいた椿姫の手が止まった。その唇は閉ざされたまま。

和やかだった空間は、急速に冷えきっていった。

後悔。
藍の胸中はこの2文字で埋めつくされていった。

しかし、言ってしまった言葉は、もう戻すことはできないのだ。
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