こころの展覧会
「……自分が罪人であるからだ」
窒息しそうなくらい重苦しい沈黙を破ったのは、椿姫の凛とした冷たい声。
それ以上椿は何も言わなかった。藍も言葉を発することができなかった。
その夜も、藍は庭先に降りた。夜顔の花を見るために。見ると思い出すのは、椿姫の姿だった。そして、昼間のあの言葉。
罪人とはどういうことなのだろうか。
どんな罪を犯したのだろうか。
その疑問ばかりが、藍の頭の中に繰り返し、繰り返し浮かんでいた。
罪人だから、顔を隠して生活している。
罪人だから、墨染の着物しか着ないのだろうか。
罪人だから、その罪の重さに耐えられなくて、自殺を繰り返すのだろうか。
考えながらも、藍はスケッチブックに鉛筆を走らせた。手が自然と動くように、なめらかに。ただ、思い浮かんだイメージのままに夜顔の花を描いた。そこには、不思議と手の震えはあまり感じられなかった。