こころの展覧会
「もっとイメージするんだ。その為に、自分の感情から目を逸らすな。抑えることもするな。生まれる感情を意識しろ。藍、お前は大丈夫だ、描けるようになるさ」
その言葉を聞いた藍の頬を、水滴が伝う。藍は最初それが何かわからなかった。気づくと、それはどんどん目から溢れだしたのだ。
「バカだな。泣く奴があるか」
それは冷たい声音だけれど、温かみを含んだ声だった。
感情はなくなったりはしなかった。
どんなに無くしたつもりでいても、それは積もり重ねられて、抑圧されていただけだった。
壊れた蛇口から出る水のように、あとからあとから溢れてくる感情は、涙となって外に出た。
ずっと見ないようにしてきた感情の蓋が開いてしまった。
心はいつだって、悲しさも、辛さも、苦しさも、感じていた。
藍が泣き止むまで、椿姫は藍の頭を撫で続けてた。