こころの展覧会
お盆まで数日。
藍はこの家から与えられた仕事の要領がなんとなくつかめてきた。与えられた仕事の半分は、椿姫の世話係の様なものだった。
そして今日も、朝のコーヒーを持って、椿姫を起こすのだった。
椿姫の部屋の障子戸を開けた瞬間、
「う……」
苦しげなうめき声がした。
コーヒーを入り口付近に置き、 布団へと近づくと、椿姫は歯を食いしばって唸っている。
藍はとっさに、椿姫を抱え起こす。
と―――椿姫が大きく目を見開き、吠えるような声を上げて、藍の腕に掴みかかってきた。
「……っ」
すごい力で腕を握りしめられ、藍はどうにか悲鳴を飲み込んだ。これは間違いなく、痣になるだろう。
「……ゆるせない」
藍が手を振りほどきたいのを堪え、じっとされるがままにしていると、椿姫は腕を揺さぶりながら、はっきりとそう言った。