こころの展覧会

藍は枕元に座ったまま、椿姫の寝顔を眺めていた。いまは、苦しそうな様子はない。
手を伸ばし、そっと、その前髪に触れる。

どうしたらあなたは苦しみから解放されるのですか。
藍は、椿姫が穏やかな眠りが得られることを祈った。

そう祈るだけだ。
何か力になれたらいいと思うのに、聞くことができずにいた。聞くことを許されていないかのように。でも、それでは何の解決にもならないことは、わかっているのだった。
今はただ歌うだけ。それだけしかできない。

同じ家で、同じ時間を共有するということで、相手の好みがみえてくるものだ。
相手の、普段と異なる振る舞いに気づき、その意味を読み取ることができるようになってくる。
藍は少しだけわかるようになってきていたが、実際はわからないことばかりだった。疑問ばかりがあとからあとからでてくるのだ。それでも、わかれたらいい、わかりたいと思っていた。
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