こころの展覧会
「……何も、映さない様な瞳をしているな」
さっきよりも近い、耳元で声がした。
「…なぁ、ソレは要らないモノなのか?」
女性の人差し指が、藍の左胸に触れた。
心の臓は鼓動を加速した。
自分の鼓動の音が、大きくなったように感じる。
血の巡りが早くなったのに、頭のほうまで血がまわってないかのようで、何も答えられないまま。
「要らないなら、……私が貰ってもいいか?…それが嫌なら、死ねばいい」
女性の声音は冷たく、凛としていた。
耳から入り、頭の中でゆっくりと融けていくような雪のような声。
不思議な感覚に陥る。
「私、待つの嫌いだからさ、早く決めてくれない?死にたいんだろ?だから、ここから飛び降りようとしている。飛び降りれば、お前の願い事は叶うんだろうな」
繰り返される“死”という言葉。
女性は淡々と口にする。