こころの展覧会
お盆前日の夜。
夕食の片づけが一段落した藍は、縁側で涼もうと、冷たいお茶を準備して向かった。
しかし、そこには先客の姿があった。静かにタバコを吸っている、一人の男。皐月の視線の先には、枝垂れ桜の木。
「皐月さん、お茶飲みませんか?」
藍は、その背中に声をかけてみた。藍の存在に気づいた皐月は振り返り、いつもの笑顔を見せた。
「あら、気が利くじゃないの♪」
言って、皐月はタバコの火を消して携帯灰皿へ入れると、藍の近くに腰を下ろした。
藍はコップに冷たい麦茶を注ぐと、皐月に手渡した。
「ありがと~」
コップを受け取った皐月は、早速口を付けた。そして、藍もお茶を飲み始めた。
――もしかしたら、これはチャンスなのかもしれない。
そう思った藍は、聞いてみることにした。
「皐月さん、聞いてもいいですか?」
「何よ改まっちゃって。いいに決まってるじゃない。なんでも聞いてちょーだい」