こころの展覧会
「あの…ですね、椿姫さんのことなんですけど、最近よくうなされてるんですよ。それで、うわごとのように言うんです。“憎んでる”、“殺してやる”って…。椿姫さんは、誰を憎んでいるんですか?なんであんなに…苦しんでいるんですか?」
「そうねぇ…、それは教えてあげられないわ。ごめんなさいね」
皐月は、先ほどよりも声のトーンを落としていった。
「皐月さんは知っているんですよね?」
「ええ。知っているわ。姫のことなら何でもね」
「そうですか…」
「知りたくても、本人に直接聞くなんてバカなことはしないでね。そうね…言えることは、“憎しみ”に囚われた人っていうのは、それだけしか考えられなくなるってこと。それ以外何も残らなくなってしまうのよ。弱いからこそ生み出してしまう感情。それは、とても、とてもね、強い感情なのよ。藍くんは誰かを恨んだことはない?」
皐月の口許は笑っているようにつり上げられているのに、細められた目は全然笑ってはいなかった。
「そうねぇ…、それは教えてあげられないわ。ごめんなさいね」
皐月は、先ほどよりも声のトーンを落としていった。
「皐月さんは知っているんですよね?」
「ええ。知っているわ。姫のことなら何でもね」
「そうですか…」
「知りたくても、本人に直接聞くなんてバカなことはしないでね。そうね…言えることは、“憎しみ”に囚われた人っていうのは、それだけしか考えられなくなるってこと。それ以外何も残らなくなってしまうのよ。弱いからこそ生み出してしまう感情。それは、とても、とてもね、強い感情なのよ。藍くんは誰かを恨んだことはない?」
皐月の口許は笑っているようにつり上げられているのに、細められた目は全然笑ってはいなかった。