こころの展覧会

皐月の声が耳から消えてくれなくなったのだ。
身体の芯が震えた感覚が抜けない。
あの視線が、あの目が、いつまでもすぐそこにあるかのように。
あの声には、毒性があるのかと思うほど、振り払うことができないのだ。



   ☆



お盆初日。
白い布のかけられた盆棚に、花や迎え団子、馬を象ったきゅうりと牛を象ったなすなどが並べられた。
その中でも、供えられた花の一部、オレンジ色の鬼灯(ほおずき)が、やけに目立つ。
提灯を模したそれは、赤色にも近く、藍はそれを眺めていた。

 

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