こころの展覧会
8月も残すところ後僅か。
真っ青な青空に、白く細長い雲がいくつか浮いている。風は涼しく、秋が近づいているのだと実感させられる。
買い物から帰ってきた藍は、15時のコーヒーを淹れると、豆大福とともにお盆に乗せ、縁側へ向かった。
縁側では、椿姫が柱にもたれかかり、読書をしている。藍はしばらくその背中を眺めていた。
彼女の絵を見る度に、痛々しいほど実感する。椿姫の心の闇の深さに。底のない沼に、足をとらわれている様な、闇の世界。闇の中にいる彼女だからこそ、あの様な絵が描けるのだと。
藍は椿姫のおかげで、自分の闇を退ける事ができた。だからこそ藍は、何か恩返しがたい、喜ぶことがしたいと思っていた。無口な彼女の喜ぶ事を探すのは、試行錯誤の毎日だった。
「椿姫さん、コーヒーの時間ですよ」
藍は椿姫の隣に座り、コーヒーと豆大福を出した。