こころの展覧会

緩やかな時間は、今日も過ぎていくのだった。こんな時間が、明日も明後日も続いていくと思っていた。



   ☆



9月に入って最初の日。
藍はいつものように買い物を終えると、和菓子屋に立ち寄り、家へと帰った。
コーヒーを淹れ、椿姫の姿を探す。

しかし、部屋にも縁側にも椿姫の姿はなかった。仕事部屋にも居間にも。

ふと物置部屋が戸が開いている事に気づいた。
普段は鍵がかかっているはずなのにと不審に思った藍は、物置部屋をのぞいた。

そこは、荒らされたかのように、筆や絵、ガラクタなどが散乱していた。でも、そこにも椿姫の姿はなかった。


胸騒ぎがする。

水の音が、やけに大きく聞こえた。
シャワーの音だ。
浴室の戸が開いている。



「椿姫さん…っ」

 

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