こころの展覧会

浴室は、赤色の水が流れていた。
倒れ込んだ椿姫の手元付近には、カミソリ。

「椿姫さんっ!!!」

返事は返ってこなかった。藍は急いで救急車を呼び、皐月と木蓮に連絡した。



数時間後。
病院に運ばれた椿姫。
駆けつけた皐月と木蓮は、藍と合流した。
3人に、医師は言った。

「もう少し発見が遅ければ、危ないところでした。念のため、一週間程入院して貰います」

その言葉に、場の空気が少しだけ緩んだ。
誰にも会いたくないという椿姫の要望で、面会謝絶になったが、皐月だけが入室を許された。

「ありがとね、藍くん」

残された木蓮は、藍に笑いかけた。

「いえ……」

「帰ろうか」

「はい」

木蓮に促され、藍は病院を出た。
2人は特に会話することもなくバスに乗った。バスに乗っている間も、お互い口を開かず、重い空気だけが身体にのしかかっていた。

< 87 / 203 >

この作品をシェア

pagetop