こころの展覧会
バスを降り、歩き始めた二人。ふと、木蓮の唇から笑い声が洩れた。

「びっくりしただろ?」

「はい……」

「もう何回目なんだろうな……」

その声は、無理に抑揚のつけられた声だった。

暗いせいで、木蓮の表情はよくわからない。

「もう何回も、何回も、こんな風に病院に駆けつけた」

藍はなんて返事をしていいかわからず、木蓮の言葉を聞いていた。

「何十回もだ…っ……その度にこんな思いになる……疲れたよ」

笑い混じりに言った木蓮。
でも、その声は震えていた。

「あの子は…何が不満なんだ?何がそんなにも死にたいと思わせるっ!??」

「蓮さん……」

「わかんないんだっ!!言葉にしてくれないとな!!何の力にもなれないのか…!??」

「蓮っ!」

木蓮を呼ぶ声。
その声の主を見つけ、木蓮は駆け寄った。

「あの子が何考えてるのか…全然わかんないっ……少しもわかってあげられないっ……ただ近くにいるだけだ!!壊れてくのを見ているだけ!!」

木蓮は叫んでいた。

< 88 / 203 >

この作品をシェア

pagetop