こころの展覧会
「落ち着け。姫もいつかわかってくれる」

松詠はそっと木蓮の肩を叩いた。

「聞きあきたんだよっ!!その言葉っ」

「信じるんだ」

松詠は木蓮の目を見据える。

「信じるんだ。明日からは俺もあの家にいるから」

木蓮はその言葉を聞くと、肩に置かれた手を振り払い、走り去った。

「すまなかったな」

取り残されていた藍に、松詠は頭を下げた。

「いえ……」

「蓮も心配してるだけなんだ。今日は疲れただろ?ゆっくり休むといい」

「はい」


その夜。
藍はなかなか寝付けなかった。
目を閉じると、あの浴室で倒れていた椿姫の姿を思い出してしまうのだった。


次の日。
いつものように目覚めてしまった藍は、庭の花々に水を与えた。そして、コーヒーを淹れた。
でも、一緒に飲む人はいなかった。昼も。夜も。その次の日も。



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