こころの展覧会

「あのっ…どうして椿姫さんは死にたいんですか?どうして自分を人殺しなんて言うんですか?」

「人殺し……椿姫が話したの?」

ふっと、柊の顔から笑みが消えた。

「はい。だから自分は幸せになる価値がないって……」

「藍くん…ごめんね。事情はやっぱり話せないの。でも、藍くんが椿姫のことを大切に思ってくれてるみたいで、少し安心したわ」

柊はそっと藍の頭を撫でた。柊のつけている香水の優しい香りが、微かにする。

「椿姫さんは……僕の恩人です…だから、幸せになってほしいんです……」

藍の目からは、涙がこぼれていた。

「そうね。それは私たちみんなの願いよ」



   ☆



次の日。
椿姫の退院は、明日に迫っていた。
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