こころの展覧会
どこにも居場所がなかったから。
信じられるものが、何もなかったから。
自分のことも、生きることも、嫌になったから。
だから、あの時死のうと思った。
そして、橋に足をかけた時、椿姫に声をかけられたのだ。
―――要らないなら、私が貰ってもいいか?
救いの声だった。
神様のようにさえ思えるほどだった。
椿姫はその後も、ぼそぼそと話す藍の話を聞いた。
それは、母との楽しかった思い出の数々。何時間も藍は話し続けた。それを、椿姫は相槌をうちながら聞いた。
「必ず思い出してくれる日が来るさ。お前たちは親子なのだから」
気が付けば、陽は傾き始めていた。
その夜。
藍の夢には、懐かしい母の姿があった。