アタシのこと、スキ?

言えないよ

「おかえり」

「ただいま」

「よかったの?傘返さなくて」

傘とは、五年のときに瑠梨からおいてって「次会ったとき返してね」って言った時の傘。

「あぁ。どーせ覚えてないだろーし」

「わかんないよ?」

「・・・・・・・・いんだよ」

そう言い残して部屋に入る。

兄貴の彼女らしい可菜って子のことなんて忘れて。

「はぁ~あ」

ため息を声にしながらベッドに仰向けになる。

コンコン。小さく兄貴がノックする。

「海。風呂は今日も夜中か?」

「あぁ」

瑠梨に会って、風呂は夜中に入ることが増えてきた。

考え事を整理するのに時間がかかる。

それに、家に帰ってきてすぐ風呂とかなんか嫌だ。

どうせ夜中に入りたくなるのがオチだし。

「ふぅ~」

部屋は暗い。電気をつけていないから。

暗いほうが落ち着く。


< 102 / 105 >

この作品をシェア

pagetop