アタシのこと、スキ?
キスは、触れるだけのキスだった。

キスをしてる間に、

涙が頬を伝った。

唇が離れて海は言う。

「何泣いてんだ?

キスすんの、イヤだったか?」

違う。違うよ。

あのね、この涙はね、

嬉しかったから、流れたんだよ。

「嬉しかったの」

「イヤじゃなかったんだな?」

「うん。その真逆」

どうか、神様。

アタシに“スキ”を教えてくれたこの人に、

アタシに“スキ”をくれたこの人に、

どうか、幸せを捧げてください。

「瑠梨。

お前がスキだ」

「さっきもきーたよ?」

「一回じゃ足りねぇ」

「アタシも、海がスキ」

「さっきもきぃた」

「一回じゃ足りないもん」

“愛してる”なんて、

そう言えるほど大人じゃないけど、

アタシたちは、“スキ”だけで、

それ以外、なにもいらないから―――。


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