アタシのこと、スキ?
まだ信じられない。

信じてもいいのだろうか。

オレは帰り道で同じ言葉を頭の中で繰り返していた。

返事が返ってくるわけでもないのに。


ガチャ――・・・。

「おかえりーー」

「だたいま」

今「おかえり」と言ったのは、

晴音 礼真(ハルネ レイマ)、大学三年の二十一歳。オレの兄貴。

ココは元は兄貴の家で、

今は一緒に暮らしてる。

両親は今、

ドコにいて、何をしているか、

そんな事わからない。

小二の夏に、オレに呆れてオレを家から追い出した。

そう、あの日の、

あの悪夢のような事件があった日の、

三ヶ月後に。

事件の日から、最初は普通に暮らしてた。

けど、三ヶ月経って、他人のような冷たい瞳でオレを追い出した。

“オレは一人なんだ”

そう思った。

バイトもできない、バイトってものさえも知らない。

まだガキだったオレは、帰る場所もなく、

ただ泣いた。

ただ、あの公園で泣いた。

そしてそのまま泣き疲れて、

吸い込まれるように眠りについた。

朝、その日は雨が降っていた。

だから、でっかい木で雨宿りをしていた。

すると、目の前に誰かが傘をさしてやってくるのがわかった。









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