アタシのこと、スキ?
一瞬目を疑ったオレ。

でも、確かに瑠梨だった。

そして瑠梨は、オレの横を、

通り過ぎた。

前に見せた、優しい笑顔だった。

閉じ込めていた想いが溢れ出した。

あの頃に、心の時計が戻っていく気がした。

だから、苦しくなった。

でも瑠梨が笑っていたことが、救いだったんだ。

そして、瑠梨に近づこうと思った。

思ってしまったから、瑠梨にあの紙を渡してしまった・・・・・・


部屋に入り、消えた、

消してしまった二人の過去を思い出す。

もし瑠梨が、二人の過去を思い出したなら、

オレは、瑠梨から離れなければいけないのかな?

そんなの当たり前だな。


そしてこの日、あの日以来、

初めて泣いた。

でも、泣き叫ぶわけでもなく、

ただ、頬を伝った一粒の涙が

“絶対に幸せにしろ”

そう訴えていた気がした。


そして、長く短い夜が終わり、

眩しいほどの、スタートの朝がきた。






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