アタシのこと、スキ?
歩き出す海。

でもすぐに振り向いて手を差し出す。

その手を取って歩き出す。

海はアタシの手を、包み込むように握る。

それが、なにより安心する。

「あんな海初めてみた」

「わりぃ。ちょっとスイッチはいっちまった」

すっかりいつもの海に戻った。

「どっちの海もスキ」

少しテレながら言ってみた。

「言ったな」

海は、優しい笑顔で、

でも企み顔で笑った。

「ねぇ、スイッチってなに?」

すると海は声を出して笑い始めた。

「言えねぇー」

「なんで?」

「言えねぇーもんは言えねぇー」

「ちぇー」

二人で笑いながら歩いていた。


< 85 / 105 >

この作品をシェア

pagetop