満たされしモノ
こんにゃくは……普通に旨かった。


甘味噌が薄く塗ってあるため、口の中に仄かな甘味が広がる。


付け合わせにしては上出来すぎる品だし、ましてやマズパンしかない僕には最高の一品だ。


「ありがとう、こんにゃく。こんにゃくにありがとう……」


僕は無意識のうちに手を合わせていた。主にこんにゃく様に。


「……本間君、それは私へのお礼デスか? それともこんにゃくに敬意をはらっているのデスか? 後者なら……」


「ありがとう不知火!! 美味しかったよ!!」


慌てて不知火に礼を言う。


言葉の続きを聞くのが怖かったからだ。


半眼になった不知火は呆れていたが、それ以上の追及はなかった。


ここで伏兵の登場。


「食べさせてもらうとは随分と仲のよいことだ。間接キスをしていることに気付いているのか、刀矢」


穴夫の横槍に、不知火が途端に赤面する。


確かに食べさせてもらったが、不知火の箸に口をつけないようにしたので、間接キスにはなっていないような……


しかし、不知火はしどろもどろになりながら穴夫に反論をしだす。


穴夫はそれを軽くいなしている。


そんな二人を僕が笑いながら眺めている、という図が出来ていた。


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