満たされしモノ
言い争いなどしながらも、僕達は着々と昼食を片付けていく。


量的にはパン二個の僕の方が少ないが、マズいので結構時間が掛かってしまった。


穴夫、僕、そして不知火と順に、だがほぼ同時に食べ終えて手を合わせる。


「「「ご馳走さまでした」」」


直後に僕達三人は立ち上がる。


机に限りがある食堂に長々と居座ると別の人が使えなくなる。


その辺のマナーはきちんと弁えているのだ。


穴夫は弁当の容器を捨てに行く。ついでに僕のパンの包装袋も持っていってくれた。


不知火は食器を返却に。僕と穴夫の使っていた食堂のコップも持っていく。


口論していたのが嘘と思える程の自然なコンビネーションだった。


ちなみに、僕のやることはなかった……


マズパンを手にした僕に気を遣ってくれたのだろうか?


……やはり持つべきもの頼れる友人か。


結局、食事はイマイチだったが、昼食自体は楽しいものになった。


当然、不知火や穴夫との会話によるところが大きい。


二人に感謝しつつ、僕は欲を出してみた。


楽しい会話には旨い食事が必要だ……と。


明日は絶対にウマパンを取ろう。


僕は密かな決意を胸に抱いた。


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