満たされしモノ
「それより、閂は……」


僕達に何か用事でもあったのか? と続けるつもりだった。


最後まで言えなかったのは、閂が遮ったからだった。


「刀矢……!! 私のことは茨と呼べと言っただろう……」


閂のいきなりの発言に僕はしどろもどろになった。


実際にはいきなりではなく、会う度に言われていることなのだが……


ただ、女子を名前で呼ぶのは、色々と多感な高校一年生でシャイな僕にはハードルが高い。


そして何故か……


「本当に馴々しいデスね、このビッチは!!!!」
「刀矢に色目を使うな、年増めが」


不知火と穴夫が突っ掛かるので余計に混乱する。


二人は閂に対し、あまり良い感情を抱いていないので、仕方ないとは思うけど……


……けど、このままでは話が進まない。


僕は三人が口喧嘩を始める前に割って入る。


「茨! これでいいだろ!? で、茨は何か用事があったんだろ?」


やはり女子の下の名前を呼ぶのは恥ずかしい。


当の閂と言えば……


「あふ……」


何故か色っぽい声を出す始末……


恍惚の表情。瞳がウルウルしていた。


だから、何でだよ……!!


 
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