満たされしモノ
「ちょっと!! 朝からなんて声を出してるんだよ!!」


邪念を振り払うことも兼ねて僕は強く指摘した。


「いや、すまない……。今まで名前を呼んでくれなかったから……」


顔を赤らめて笑う閂は物凄くなまめかしい。


確かに何度も催促されていたが、名前を呼んだのは今が初めてだ。


「だからってそんな嬉しそうに……。こっちまで恥ずかしく」
「朝から何をイチャついているのデスか~~!!!!」


不知火の怒声に言葉を遮られた。


皆して僕に喋らせてくれない気がする。


それにしたって、どうして不知火は閂と絡むといつも怒り出すのだろうか?


閂が不知火のそんな様子を見てからかっているのに気付いていないのか?


「フフフ……羨ましいのか? 貴様は刀矢と長い付き合いの割りに名字で呼ばれているのだからな。


貧乳は名前で呼んで貰えないとみた」


「胸の大きさは関係ないデス!!!!!!」

確かに関係はない。


だが、閂が自慢げに寄せ上げている胸に目が向いてしまうのは事実だ。


「ふんっ!! なのデス!!」


ブスリと僕の目に不知火の指が突き立てられた!!


僕の曇りなき眼(まなこ)を襲う激痛!!


「フアァァァァァ!!!! 目がぁ~、目がぁ~~~!!!!」


僕は某大佐の真似をしながら地面を転がっていた。


 
< 19 / 64 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop