満たされしモノ
「そんなことはどうでもいいデスよ!!」


しばらくぶりに不知火が声を発した。


彼女はいつの間にか僕の背後に移動し、震えながら僕の服を掴んでいる。


僕と目が合うと、キッ、と睨まれた後、服を掴む力が強くなった。


「ようは、危険人物が学校に来ているってことデスよね!?


本間君!! しばらく『パンタゴン』に行くのを止めるのデス!!」


「えぇっ!! な、何でだよ!?」


思わず不知火から距離をとり、反論する。


戌亥先輩が『パンタゴン』に現れたということだったが、それだけで僕の主戦場を離れる事は出来ない。


何より、僕は『ウマパン』が食べたくて仕方がないのだ。


しかし、不知火としても引かないご様子……


「つべこべ言うなデス!! 私が駄目と言ったら駄目なのデス!!!!」


どんな理屈だよ、と嘆息をもらす。


不知火が何故そこまで意地を張っているのか理解に苦しむ……


「……っと、そこまでにしておけ。少し喋り過ぎたみたいだ。もうすぐで予鈴が鳴るぞ」


閂の仲裁で気付いたが、確かに予鈴が間近だ。


「とにかく! 本間君は私の言う事を聞くこと!! いいデスね!! 絶対デスよ!!」


言うだけ言って、僕達を置いて校舎に入る不知火だった……


 
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