危険人物彼女。
序章
あの日、僕は緊張していた。
馴れないスーツはいかにも
就活中の大学生感たっぷりだった。
緊張をほぐすために
立ち寄ったカフェで
何度も履歴書や書類に
不備が無いか見直していた。
「お待たせしました、アイスコーヒーです。」
そう言って運ばれてきたグラスを寄せて
ストローを思いっきり吸った。
口に冷たい苦さが広がる。
「っ!?あ、ガムシロ…」
慌てて飲んだせいで
ガムシロを入れるのを忘れていた。
大の甘党の僕は、口に残る苦さに顔をしかめた。
書類の入った封筒を隣の椅子に置いて
グラスの水滴で濡れた手を
ハンカチで拭いた。
すると携帯が鳴り、画面には見知らぬ番号が表示された。