危険人物彼女。
「それじゃ。」
そう言って彼女は軽くお辞儀して
来た道を走って戻って行った。
そんな彼女の後ろ姿をぼんやり見ていた。
「…あ、急がないと!!」
ぼんやりしていた自分を
奮い立たせて急いだ。
「伊沢さん、どうぞ。」
5分オーバーして
なんとか桐ヶ丘高校に着いた。
と同時に名前が呼ばれ
面接室に通された。
「いやぁ、急に時間変更してしまって
申し訳なかったですなあ…」
笑顔のやわらかい校長先生が
軽く頭を下げて笑った。
「いえ…大丈夫です。」
「きみはとても素直な目をしているね。」
「あ…ありがとうございます。」
「教師とはとても大変な仕事だ。
ただ物事を教えるだけじゃない。
生徒や保護者とも向き合い、
彼らの次のステップへのサポートも
手伝っていかねばならん。
高校生は一番難しい年頃で
一筋縄ではいかんこともあるだろう
そんな時に正面から立ち向かうことが
君にはできるかな?」
そう言って校長先生は
真剣な目で僕を見た。
「はい、できます。頑張りたいです!」
そう答えると校長先生は
優しく笑って、
「頑張ってくださいね、
――――伊沢先生。」
そう言った。
「え…!?はい!!がんばりますっ!!」
僕はびっくりして立ち上がり
深々と頭を下げた。
こうして、僕は晴れて
桐ヶ丘高校教職員採用試験に合格し
高校教師となったのだ。