危険人物彼女。




「という訳で1年間A組の
 担任をすることになった
 伊沢啓(イサワ ケイ)です。」

黒板に馴れないアンバランスな
名前を書いた。


「せんせーい、何歳?」

「彼女いるのー?」


クラスのあちこちから
質問が飛んできた。


「えーっと…年齢は22で
 今年23になります。
 彼女は…プライベートなので
 ここでは言いません。」

あちこちから"若ーっ!"とか
"絶対彼女いるよねー"など
あれこれ聞こえてきた。


「はい静かに!
 じゃあー出席をとります。

 藍野さん、榎本さん、江坂さん
 塩崎くん――」


「せんせー、"さん"とか"くん"とか付けなくて
 呼び捨てでいいから!」


塩崎くんと思われる子が
手をぶらーんと上げて言った。

「あ…うん、わかった。

 椎那ー、……篠宮、」


"はい"と声をする方を見ると
愛がいたずらっぽい顔で笑っていた。
恥ずかしくなってぱっと目を反らした。


「――――
 森岡ー、山岸、湯川ー、
 以上30名だな。」


クラスを見渡すと自分が教師になった
という実感がした。





「先生、よろしくね。」


窓側の一番後ろに座る
愛がこちらを向いて言った。


ニコっと笑った笑顔は
どこか意地悪そうに見えた。




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