ヘタレ船長と二人の女海賊
光ない瞳を俺に向け、アンは顔を上げた。

「貴方があの時男らしく戦っていれば、犬のように繋がれる事はなかったろうにね…」

かつて俺を心から慕ってくれた女の言葉が、鋭く胸を抉る。

これまで何十回、何百回となく聞かされた、『ジョン・ラカムは腰抜けだ』という言葉。

しかし、今回ほど堪えた事はなかった。

…それ以上何も語らず、アンは俺の横を通り過ぎていく。

「さぁ、行くぞ」

海兵にひっばられ、俺も重い足取りで進みながら。

「きついね、どーも…」

自嘲の笑みを浮かべるしかなかった。

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