ヘタレ船長と二人の女海賊
酒場について駆けつけ三杯。

あっという間に葡萄酒を飲み干し、丸焼きの肉にかぶりつく。

と。

「ん?」

俺は酒場の奥に、見慣れない女の客がいる事に気づいた。

赤いドレスを身に纏った、長い黒髪の何ともいい女。

一人で静かにタンブラーを傾ける姿は、こんな荒くれ者どもばかりが集う大衆酒場には不似合いなほどに優雅で、妖艶で、洗練されていた。

当然こんないい女を放っておく筈もなく、むさ苦しい男どもが次々と声をかけるものの、女はそれを適当にあしらってかわす。

…ホイホイ誘いに乗らない辺りが、いい女っぷりに拍車をかけていた。

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