てるてる坊主の恋
「失礼しましたー」

そう言って職員室を出ると、廊下の電気はほとんど消されていた。

非常口を示す緑色のランプと、職員室から漏れる電灯の明りだけが、チカチカと辺りを照らしている。


(こんなに長引くなら、部活切り上げれば良かったなぁ…)

進路の話自体はすぐ終わったのに、担任が延々と自分の昔話をするもんだから、すっかり遅くなってしまった。



ペタ ペタ

自分の足音がやけに響く。


(何か出そう…)

普段と違う、ひんやりとした空気を纏う校舎。

人がいない、というだけでこんなにも不気味な場所になるものだろうか。


(早く、美術室に行かなくちゃ…!)

本当は今すぐに家に帰りたいけど、こんな絶好のチャンスを逃す訳にはいかない。


私は「怖い」という気持ちを抑えて、駆け足で二階へ上がった。





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