それでも僕は
「優しいね、君。」


彼女は僕の手を掴んだ。


冷たくてやわらかい彼女の手。


彼女は僕の胸に額をつけた。


「少し…こうさせて」


さっきまで五月蝿かった雨の音が遠くに聞こえる。


静寂な一時はまだ若い僕には神秘的で神々しかった。


名前も知らない彼女、出会って10分程しかたっていない二人。


なのに僕はすでに彼女の虜だった。



「ねぇ…来て。」


そういうと彼女は僕の手を引いた。
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