遠目の子鬼
不思議の扉

1) 異世界の者…

西日の照り返しがきつい――


でも教室中がきらきらと輝いて見える幻想的な瞬間でもある。


僕は個人的に西日が嫌いでは無い。


一日が終わりかけて居る寂しさと妙な高揚感。


魔の刻と言われれば、それがぴったりの表現だ。


その光の中、僕は譜面台に楽譜を並べて楽器を構えると、書きこまれたメモを読み返して同じ処をゆっくりと繰り返し演奏してみる。


先生の指示を思い出し指が遊んでしまう部分に気を付けながら、ゆっくりと普通のテンポの半分程度のスピードで演奏してみる。


こうやってユーフォニュームの練習をしていると時間は酷く短く感じられる。


授業中は、あれ程退屈で永遠に続くんじゃないかと思われた時間も、好きな事をしていれば勿体ない程短く感じる。


出来る事なら巻き戻したいと願う程だ。



< 1 / 274 >

この作品をシェア

pagetop