遠目の子鬼
「ちょっと良いかしら?」


「う、うん、構わないけど…」


なっちゃんは、きょろきょろと周りの様子を伺ってから僕の耳元で小さな声で僕に言った。


「今日の個人練習、わたしも混ぜてくれないかしら?」


彼女の息が耳にかかって、妙にくすぐったかった。


そして彼女が言った事も…


「か、構わない…けど…なんで?」


「ううん、又兵衛さんに会いたいなと思って。それになんだか楽しそうだし」


なっちゃんは、そう言って綺麗な微笑みを僕に向ける。


僕は頬が赤く成るのが自分ではっきり分かった。


「そ、そうだね…うん、分かった」


「じゃぁ、宜しくね」


なっちゃんはそう言って、僕の前から立ち去った。
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